2021年05月01日
2021年度 京都大学二次試験講評《世界史》
試験時間は90分。大問1・大問3はアジア史・欧米史の300字論述で、大問2・大問4はアジア史・欧米史の総合記述問題で構成されており、例年通りであった。形式は変わっていないが、今年度は現代史の問題が出題されておらず、コロナ禍の影響からの配慮かと考えられる。
第1問は、「16~18世紀のヨーロッパ宣教師の中国での活動とその影響」について。“16世紀にヨーロッパ人宣教師が中国に来るに至った背景”と“16~18世紀における彼らの中国での活動とその影響”。一見するとオーソドックスな問題のように見えるが、字数300字以内で“活動”と“影響”をどこまで言及すればよいか情報の取捨選択が難しかったと思われる。
16世紀の背景から大航海時代と宗教改革、18世紀における中国での影響から典礼問題にたどり着くよう論述を構成すれば、自ずとどう構成すればよいか見えてくると思われる。京都大学に限らず、社会の論述問題はまず設問を解析するところから始めなければならず、そのためにも基本事項の知識・理解は必須条件である。
第2問は、A.「関中盆地に都を設置した中国王朝」、B.「古代~近代の西アジア文化圏」に関する問題。A.B.どちらとも教科書レベルの基本事項からの出題ではあったのだが、A.の(11)では「外戚とは何か」を簡潔に説明させる問題。歴史学では当たり前に触れている語句ではあるが、説明させる問題は意外であったろう。
またB.(22)の“タバリー”は用語集でも頻度2レベルでやや難易度が高く、(23)のイスラーム世界の寄進制度である“ワクフ”は丁寧な勉強をしていないと解答は難しかった。
第3問は「1815~1871年のドイツ統一に至る過程」について。条件として“プロイセンとオーストリアに着目し”とある。この論述は非常にスタンダードなものなので、確実に得点源としたいところ。
第4問は、A.「「ローマ」の意義」、B.「人類史上に動物が果たした役割」。大問4も大問2同様に基本レベルの問題でほとんどが構成されていたため、確実に得点したい。ただ、大問4は例年短文論述を求める傾向があるため、この対策も忘れてはならない。
A.(2)のペリクレスの市民権法について、(10)のテオドシウス帝の行った宗教政策でその後の欧州に強い影響を与えたもの、B.(20)の南米からイギリスへの牛肉の輸出が増加した技術的理由について…以上3問は簡潔に説明させる問題。またB.(17)(イ)でテノチティトランが現在の“メキシコシティ”、B.(24)『白鯨』の作者で“メルヴィル”を問われたのは少々難しかったか。
以上からも分かる通り、京都大学は各地域・各分野から、古代史~現代史まで出題するため、まんべんなく学習をしておく必要があり、正確な語句知識を求められる。語句知識の問われ方が判断しにくいため、単なる一問一答での暗記では瞬発力を身に付けることは難しいため、私立大学の入試問題を使った対策は有効であろう。
また、短文論述や300字論述に対応していくためは、的確に問題文を読み取る読解力と簡潔に要点をまとめられる文章作成能力が不可欠で、早い段階から添削指導を受けておくことが肝要である。
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