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2021年05月01日

2021年度 京都大学二次試験講評《国語》

文系は例年通り120分・3題で、文・法・経済(文)・総合人間(文)は150点、教育(文)は200点。理系も例年通り90分・3題で、総合人間(理)・教育(理)・経済(理)・理・医(医・人間健康)は150点、薬・工・農は100点。文理ともに必答スタイル(理系は2006年までは文理共通問題全3題から2題選択)であった。

大問1は現代文評論(『忘れ得ぬ言葉』西谷啓治)で、文理共通(理系は小問数が1問少ない)であり、大問2は文系が現代文随筆(『すだれ越し』石川淳)で、理系が現代文評論(『韻と律』岡井隆)、大問3は文系が古文(『栄花物語』)、理系が古文(『正徹物語』)であった。

大問1は文理共通の評論で、本文の分量は昨年からほとんど変化が無く、約3000字となった。京都大学出身の哲学者が学生時代の友人の言葉をきっかけに人間関係の在り方を記した随筆で、受験生にも比較的読みやすい文章であったと言える。しかしながらタイトル表現の意味を問う問1では全体内容を吟味した解答が要求され、設問毎の記述重複を避けるための工夫が要求されるなど、一筋縄では仕上がらない問題が多かった。

文系の大問2は石川淳による随筆からの出題であった。作者の過去における少女の死と藤の花にまつわるエピソードから自身の輪廻や巡り合わせに思いを致す随想である。石川の随筆は2005年度後期入試・1989年度前期入試にも出題されている点も注目だ。文語調の文章で受験生には読みづらかったと推察され、比喩の説明など難易度の高い問題も例年通り出題されている。

理系の大問2は、評論からの出題で、日本の近代における闇の消失について書かれた文章。分量は2019年度から400字増加し約2000字。設問数は2019年度同様に3問で、解答記述量は昨年同様9行となった。難易度は昨年並みである。

大問3の古文は、文系が平安時代の歴史物語である『栄花日記』からの出題。分量は2020年度の約620字から860字程度に増加し、設問数は2020年度から減少し4問であった。2016年度は本文中に江戸時代の注釈書『勢語臆断』、『説苑』所収の漢文(返り点・送り仮名あり)が引用され、設問にもなっており、2017年度は漢詩『暁行』からの引用(返り点あり・送り仮名なし)があり、現代語訳させる問題があった。2018年度には設問に『風雅和歌集』真名序からの漢文の引用があった。今年度も昨年度同様、漢文・漢詩の領域における出題はなかった。理系は、歌論書『正徹物語』からの出題で、分量や難易度の大きな変化はない。

現代文は傍線部説明問題、古文は現代語訳・傍線部説明問題をそれぞれメインにした、各大問それぞれ相当な量(全問題トータルで文系は1200~1500字程度、理系は800~1000字程度)の記述論述を要求する設問内容であった。ただし、2007年度から90分で3問必答の理系は、大問ごとの設問数・記述量を減らしたため、問題そのものは2007年度以前と比較すれば易化している。本文の正確な読解力・解釈力に加えて、「速くて正確かつ文字量に対応した」実戦的記述・論述解答力を確実に習得した者には、かなりの高得点が可能である。





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