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2021年05月01日

2021年度 東京大学二次試験講評《世界史》

試験時間は、地歴2科目で150分。大問3題。第1問は大論述(600字)、第2問は論述(120字×1問、90字×3問)と語句記述2問、第3問は語句が10問。今年度の形式については、第1問は昨年度と変わらず600字、第2問は論述問題だけでなく語句記述も問われており、第3問は昨年度と同様に語句記述問題のみ。

東大世界史の場合、古代史から現代史までの基本的な知識は不可欠だが、合わせて大論述に対応しうる文章力を身につけたい。早いうちから添削指導を受けて、文章構成のテクニックや語彙の増加を心がけること。また教師に見てもらうことで、自分では気づけない文章の“クセ”を早めに是正することが大切であろう。

第1問は「5世紀から9世紀の地中海世界における3つの文化圏の成立過程」について。昨年度は史料A~Cの内容を論述内容の事例として引用して論述する新傾向の出題形式となっていたのだが、今年度は史料の出題はなく例年通りの定番出題形式が踏襲されている。求められていることは“5~9世紀”“地中海世界において3つの文化圏が成立した過程”“宗教の問題に着目”しながら記述すること。すなわち、ラテン・カトリック文化圏(西欧)、ギリシア・ビザンツ文化圏(東欧)、アラブ・イスラーム文化圏の3つに分化していく過程と宗教との関連から説明していく。指定語句に“ギリシア語”があることから、西ヨーロッパ文化圏のラテン語・イスラーム文化圏のアラビア語についても言及したい。

第2問は「異なる形態の身分制度や集団間の不平等」について。(1)(a)「14~15世紀に西ヨーロッパの農民の地位が向上した複数の要因」について。リード文にある“社会的・経済的要因”をふまえて、ペストの流行による労働力減少、貨幣経済の浸透による貨幣地代の普及を説明する。(1)(b)「ロシアの農奴解放令によって農民の身分は自由になったが、農民の生活状況が改善されなかった理由」について。農奴解放令後、土地分与が有償・土地がミールに帰属したことは知っているが、その後の農民たちの生活については教科書には記載がほとんどないため難しかった。 (2)(a)“ホセ=リサール”を解答させる語句記述問題。用語集では頻度7レベルなので覚えていてほしい人物名ではあるが、学校の授業ではやや盲点か。 (2)(b)「フィリピン革命でフィリピンの統治体制がどのように変化したか」について120字で論述させる問題。近年各大学の入試問題で、19世紀後半のフィリピン革命の出題頻度が上がっていたことから鷗州塾の世界史授業では丁寧に解説したため、さほど難しいとは感じなかったであろう。(3)(a)“アパルトヘイト”を解答させる語句記述問題 (3)(b)「アパルトヘイトの内容・撤廃された背景」について90字で論述。アパルトヘイトの撤廃された背景についてまとめる点はやや難しかった。

第3問は「人の移動とその影響」。語句解答問題が10問で構成されていた。(6)「フランスはハイチの独立の動きを弾圧しようとしたが失敗した」、「この時のフランスの指導者」の名前として統領政府期の“ナポレオン”が正解。(9)「1919年に朝鮮人が上海で抗日運動団体を統合して結成した組織の名前」として“大韓民国臨時政府”が正解。用語集でも頻度が上がっている語句ではあるが、これは盲点。上記2つ以外は基本的な語句を問うており、確実に解答したいところ。





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