2020年04月28日
東京大学二次試験の講評(2020物理)
試験時間は理科2科目で150分、大問数は3題で例年通り。出題分野は例年力学と電磁気が1題ずつで、それ以外の分野から1題出題されている。2020年度もこの通りであり、3問目は熱力学であった。2019年度と比較してやや易化したが、それぞれ東大らしい思考力を試される良問が並んだ。また2018年までほぼ出題されることのなかった空欄補充の設問が2019年度から出題され始めたが、今年度もそれは踏襲されている。この補充の問題は基本レベルであり、物理が苦手な受験生でも少しは点数が取れるようになっている。
大問1は、面積速度一定の法則の証明を中心に据えた問題であり、この法則が中心力で運動する場合に成立することを理解していれば解きやすいが、市販の問題集ではあまり見られないテーマであり、面食らった受験生が多かったと考えられる。また後半で、ボーアの量子条件を用いながら暗黒物質の質量の下限を出すという、これまた見慣れないテーマの設問であったが、問題文をしっかり読んで、意図を把握できればそこまで難しくはないだろう。
大問2は、磁界を横切る導体棒の運動についての問題であった。一定の速さになった時には棒に電流が流れていないことに気づけば、かなり解きやすく、完答できた受験生も少なくないだろう。
大問3は、熱力学から気体の状態変化についての問題であった。一覧表として各状態での圧力・温度・体積・内部エネルギーが与えられており、それを利用することで状態間の各過程がどのような変化なのかが分かれば解きやすい問題であった。この設問も完答する受験生が少なくないだろう。
全体的に問題文もよく練られており、そこからどう解いていくのかを判断できることも多い。また、前問の結果を利用しながら次の問題を解く構成になっていることが多いことも意識し、各設問の状況を整理しながら解き進めていく必要があるだろう。 東京大学の物理は、全体のボリュームが大きく、かつ記述を要求しているので、時間内に解き切るのはかなり困難である。したがって、まずは基本的、標準的な問題を見抜いて確実に得点源にしていく必要がある。その上でさらに、物理の本質を問う設問にもアプローチできるよう、日ごろの演習から物理的意味を考え、思考力を養成していきたい。