メニュー

2020年04月28日

東京大学二次試験の講評(2020日本史)

試験時間は、地歴2科目で150分。大問4題。すべて論述問題で、出題形式は昨年度と変化なし。今年度は、第2問では図版を利用した問題の出題も見られたが、条件文を設問の主旨に沿って解釈し、基本的な日本史の知識と合わせて記述させるのも従来通りであった。東京大学の日本史対策としてはまず、この出題形式に慣れることが最優先である。


第1問は「奈良時代~平安初期の漢字の普及・定着」。A.「8世紀の木簡に『千字文』『論語』の文章の一部がみられる理由」について。律令国家が文書行政であることや、儒教の教養が重視されていた点を指摘する。B.「毛筆の書が伝えられる過程と、唐を中心とした東アジアの中で律令国家・天皇家が果たした役割」について。漢字・仏教・儒教の受容と唐を中心とする東アジア文化圏の形成の関連性をまとめる。
第2問は「16世紀の山鉾運営と町の自治」。参考文・図版(『国宝 上杉本 洛中洛外図屏風』)・地図を用いた出題形式。受験生は応仁の乱後、京都で町衆が祇園祭を復興したことは知識として持っているため、これを主軸にして条件文・図版・地図を読み解いていく。山鉾の名が町名となり、さらに山鉾巡行が町の自治の強化に結びついたことを条件文の中から読み取って、適宜反映させながら論述を組み立てる。
第3問は「江戸時代の改暦」。A.「改暦に際して、幕府と朝廷が果たした役割」について。幕府は暦を作成・施行する実践的役割、朝廷は改暦の儀式や暦名の決定など権威的・形式的役割を担ったことを指摘する。B.「改暦に際して依拠した知識の推移」について。時系列で並んだ参考文(1)~(5)のそれぞれの暦が、中国に依拠したものから西洋天文学の知識を漢訳したものに変わり、さらにオランダ語の天文学書を直接翻訳したものに変遷していることをまとめる。
第4問は「軍人の実践すべき道徳と軍人勅諭」について。A.「陸軍将校に対する西周の講演内容の背景にある、当時の政府の方針と社会情勢」について論じる問題。史料には“1878年”とあるので、これが西南戦争後に出されたものであることが分かれば、明治政府の方針や社会情勢については導き出しやすいはず。B.「軍人勅諭を掲げた政府の意図を国内の政治状況」について。これも上記同様、史料に“1882年”とあることから、前年に明治十四年の政変が起こっていること、国会開設の勅諭が出ていることを考慮すること。ここから史料にある「…世論に惑わず、政治に関わらず、ひたすら忠節を守れ。…」が何を意味しているかを判断し、論述する。


上記からも明らかではあるが、東京大学の日本史対策は、他大学への対応と同じことをやっても点数には結びつかない。参考文や史料、図版等を正確に読み取り、かつ日本史の語句知識を踏まえ、問題文に沿って解答を作成する能力を求められる。東京大学の日本史攻略のためには、徹底した過去問研究と添削指導を受けることが必須条件である。


一覧へ戻る