2020年04月28日
東京大学二次試験の講評(2020国語)
文科は150分・4題(120点)、理科は100分・3題(80点)で、配点・問題数共に例年通り。第1問の現代文評論(「『神の亡霊』6近代の原罪」小坂井 敏昌)、第2問の古文(『春日権現験記』)、第3問の漢文(『漢書』班固)は、文理共通問題。ただし、古文で2問、漢文で1問、理系の小問数が少ない。第4問は例年通り文科のみの問題で、現代文随筆(『詩を考える─言葉が生まれる現場』谷川 俊太郎)であった。
現代文は傍線部説明問題(大問1には120字記述がある)、古文・漢文は現代語訳・説明問題をそれぞれメインにし、各大問それぞれ相当な記述・論述量を要求する例年通りの設問内容であった。
第1問の評論の文章量は、2019年度より増加した。2000年度以降、4題出題されていた2行説明の問題が、2017年度以降1題減少し3題となっている。100字から120字での内容説明問題は従来通りの出題であった。入試頻出の作者の作品であり、自由と平等という近代原理が格差を正当化する可能性を論じた文章であった。比較的容易な文章ではあるものの、設問の処理には正確な言語把握が要求される問題も見受けられた。
第2問の古文の文章量は、2019年度より増加した。中世の文章が出題されたのは2年ぶりであり、神社縁起の出題は珍しい。昨年比で難化しており、文科のみ和歌に関連する問題が出題された。
第3問の漢文は、逸話からの出題で難易度は易化。分量は昨年度より増加したが、文章自体は標準的な難易度であり、読解に苦労した生徒は少ないと推察される。公正な裁判官を論じた文章であった。
文科の第4問は、有名な詩人のエッセイからの出題で、難易度は昨年並。分量は2018年度より増加した。文章自体は読みやすいものだったが、傍線部の表現を吟味した適切な説明は難しかったのではなかろうか。
全体的に、高質で難度の高い問題であるが、それ故に受験生の得点差が大きくなるだろう。本文の正確な読解力・解釈力に加えて、スピードと精度、さらに設問要求に適合した実戦的な記述・論述解答力を確実に習得した者には、かなりの高得点も可能である。それには、何よりも比較的解きやすい古文・漢文での時間短縮が不可欠である。