2020年04月28日
東京大学二次試験の講評(2020化学)
試験時間は理科2科目で150分。2020年は、2016年以前と同じ3つの大問が独立した2題に分かれて出題され、実質的に6つの大問で構成されていた。問題構成は2019年度と同じく、第1問が「有機化学」、第2問は「理論・無機化学」、第3問が「理論化学」分野からの出題となった。
難易度は、全体的に易化した2017年以降ほぼ同様となっている。最上位層が受験するため、2016年以前に比べると実力による得点差が小さくなり、ミスの有無が合否に与える影響が大きくなっている。2019年よりも分量が増加したため、解答時間は不足しやすい。目標解答時間は、第1問が25分、第2問が20分、第3問は30分程度であろう。
第1問の前半は、サリシンの構造について問われた。アセチルサリチル酸やβ-グルコースが決定しやすいため、正しくアプローチすれば、短時間で構造決定が可能である。後半は、レブリン酸とその誘導体の構造について問われた。ヨードホルム反応を手掛かりにGから考えると、非常に難しく時間もかかる。J~Nがコハク酸、リンゴ酸、フマル酸だと分かれば解きやすくなる。易しい順に構造決定することが重要である。
第2問の前半は、空気の分析と人工光合成について問われた。エは四酸化三鉄の生成を知らなければ完答できないが、論述で部分点は確保したい。後半は、電子対反発理論による分子やイオンの構造解析とドライアイスの結晶構造について問われた。電子式から分子やイオンの構造を決めるテーマは頻出である。計算問題はウとケのそれぞれ1題ずつなので、短時間で解き終えたい。
第3問の前半は、トロナ鉱石の定量分析、炭酸の電離平衡について問われた。イの誘導は、類題の経験がなければ難しく感じたであろう。また、イの結果をウとエで利用するため、ここでは差がつきやすい。後半は、火山ガスをテーマに、気体の密度、熱化学、平衡、硫黄の析出が多角的に問われた。1つ1つは難しくないが、計算や論述には時間がかかるため、取捨選択が重要である。
例年、思考力・計算力を要する問題が多く、考え方や計算の過程を答えさせる形式となっており、他大学と比べて難易度は高い。また、単純な知識問題が出題されることはほとんどなく、知識を活用することを要求される。高校レベルの問題集では見かけない物質やテーマがよく出題されるが、問題文中に考え方や解法のヒントが示されていることが多く、読解力と思考力を養成しておきたい。また、論述・記述問題も多く出題されるため、対策が必要である。