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2020年04月28日

東京大学二次試験の講評(2020世界史)

試験時間は、地歴2科目で150分。大問3題。第1問は大論述(600字)、第2問は論述(120字×1問、90字×2問、60字×4問)、第3問は語句が10問。今年度の形式については、第1問は昨年度が660字であったのが600字に戻り、第2問は論述問題のみではあったが昨年度より総字数は150字増加、第3問は昨年度と同様に、語句記述問題のみ。
東大世界史の場合、古代史から現代史までの基本的な知識は不可欠だが、合わせて大論述に対応しうる文章力を身につけたい。早いうちから添削指導を受けて、文章構成のテクニックや語彙の増加を心がけること。また教師に見てもらうことで、自分では気づけない文章の“クセ”を早めに是正することが大切であろう。


第1問は、「15世紀頃から19世紀末までの東アジアの伝統的な国際関係のあり方と近代におけるその変容」について。条件として“朝鮮とベトナムの事例を中心”に論述すること。さらに、史料A~Cの内容を論述内容の事例として引用すること、例年の指定語句は7~8個だったのが6個に減少していることなど新傾向の出題形式となっていた。設問にある“15世紀頃から19世紀末までの東アジアの伝統的な国際関係のあり方”とは、冊封体制のこと。この論述では、中国と朝鮮、中国とベトナムとの関係だけを求めてはおらず、指定語句に“薩摩”が入っていることから、朝鮮・ベトナム同様に冊封されていた琉球王国、および日本・欧米の関係までを含めて論述を構成する必要がある。指定語句にある“小中華”は教科書でも頻度が上がってきた語句で、今年度の一橋大学の第3問でも同内容についての出題が見られた。
第2問は、「民族の対立や共存」について。(1)(a)「前3世紀末頃の騎馬遊牧民国家の状況」について。設問に“漢の武帝の時代…”とあるが、“前3世紀末”とあるため武帝期については言及できない。秦から前漢成立期の匈奴の冒頓単于についてまとめる。(1)(b)「辛亥革命前後のモンゴルとチベットの独立の動き」について。教科書や用語集には辛亥革命(1911年)を受けて、外モンゴルの独立(1911年)やダライ=ラマ13世によるチベット独立(1913年)については記載されているが、きちんと学習しておかないと対応が難しかった。(2)(a)「スエズ運河完成から20年程のエジプトに対するイギリスの関与とそれに対する反発」について。図版がスエズ運河であることを判断し、この施設が完成したのが1869年であることを確認する。ここから“20年程”、すなわち1870年代~1880年代までのエジプトに対するイギリスの関与とその反発をまとめていく。(2)(b)「オーストラリアにおけるヨーロッパ人の入植経緯と白人中心主義が形成された過程」について。白豪主義の形成過程が問われており、18世紀のクックによる領有宣言に始まり、イギリス人の移住者が増えたこと、1850年代のゴールドラッシュから華僑が流入し、白人との労働力競合から白豪主義が形成されたことを指摘する。(3)(a)「1920年代のアメリカ合衆国における移民や黒人に対する排斥運動」について。WASPや移民法、KKKについて言及すること。(3)(b)「1846年に開始された戦争の名、及びその戦争の経緯」について。この戦争とはアメリカがテキサスを併合したことから勃発したアメリカ=メキシコ戦争で、アメリカの圧勝で終わり、ニューメキシコ・カリフォルニアを獲得したことは書きやすい。
第3問は、「思想とその影響」。語句解答問題が10問で構成されており、昨年度まで見られたやや難解な問題はなく、全て基本的な事項の確認。文化史からの出題ではあったが、標準的な問題で構成されていたため、失点は防ぎたいところである。


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